泣きたくなる話

   泣きたくなる話Part22
『 2月の憂鬱 』


2016.2.7 校長記

  いつもは感動で泣きたくなった話を書いていたが、今回は文字どおり、苦しくて泣きたくなっている話を書こうと思う。(そんなことを書く暇があったら、今抱えている問題を解決する方にエネルギーを割いたらいいでしょと言われそうだが・・・)
  そんな時だからこそ違うことをしたくなるという、私の悪い癖が出てしまうのである(Part 11『変な癖』)。それに、この「泣きたくなる話」には結構ファンがいて、「次はいつ?」と聞かれたり「楽しみにしているから」と言われると、ついつい辛い方を後回しにしてしまう。
  学校の1月・2月は、1年の反省をしたり次年度の計画を立てたりする時期であり、なかなか忙しい。加えてこの時期には高校入試もあって。ところが、校長である私には別の憂鬱が待っている。何かというと、各方面からの原稿依頼が一気にやってくる。今日段階で、校内の刊行物の巻頭言等が6本、同窓会とPTAの会報への寄稿が2本、さらに外部機関からの依頼が3本と、計11本にもなっている。ウインタースポーツに興じる方々がいらっしゃる一方で、私にとっての2月は憂鬱な月なのである。冒頭で「そんなことを書く暇があったら云々」と言ったのは、こういうことである。

  原稿執筆のプレッシャーで泣きたくなっているのには、その数の多さもさることながら、別に理由がある。自分の せん がく さい の身を今更嘆いても仕方ないが、問題は「普通」が嫌という性格が災いして、なかなかペンが進まない。おおよそ巻頭言などというものはパターンがあって、そこに今年度用のパーツを当て嵌めていけばそれなりに体をなすものなのだが、事ここに至っても、昨年と一緒は嫌とか、ありきたりでは納得できないという変なところに拘る悪い癖が出てしまうのである。どうせ誰も読まないんだから、それらしく書いておけばと割り切れればどんなに楽なことか。
  泣き言ばかり言ってても、誰も代わりに書いてくれたりはしない。生徒には「辛いことから逃げるな」と常々言ってるではないか。昨日までに何とか5本は仕上げた。意味のないこととは承知しながら、参考までに5本で何字くらい書いたものかと総字数を数えてみたら、7,252字、400字詰め原稿用紙で18枚とちょっと、びっくりである。残りの6本を完成させたら一体何字になるのだろう。全部つなげて「2月の憂鬱のもと」とでも題して出版しようかしら。マズイ、精神までやられ始めている。
  作家は締め切りに追われて大変だと聞くが、あちらは書きたくて書いているのだし、もしかしたら芥川賞、直木賞の受賞の栄に浴するかもしれない。こうやって愚にも付かないことをいくらぼやいていても減ってはいかない。締め切りだけがどんどん迫ってくる。仕方がない、誰か一人くらいは読んでくれることを信じて、もう少し頑張ろうか。   ちょっと待てよ。今日は2月7日。あと3週間もすると卒業式ではないか。式辞も考えないと・・・。
 どうしよう、本当に泣きたくなってきてしまった。




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     泣きたくなる話Part21
『 雪かき 』


2016.1.19 校長記

  人間とはつくづく勝手な生き物であると思った。今年は暖冬で、しかも過去に経験したことがないほど雪のない冬。ところが、夜半からのドカ雪で世間は大混乱。例年なら1月の今頃は道に雪があるのが当たり前で、雪が降っても文句を言ったりするものは誰もいない。しかし今日はどうだろう。例年どおりの1月に戻っただけなのに、季節外れの雪とでも言わんばかりに邪魔者扱いを。雪にすればいい迷惑である。
  とは言うものの、私も今朝はいつもより30分も早く家を出た。学校に着くと、先生と生徒がもう雪かきをしてくれている。誰に頼まれたわけでもなく、あとから登校してくる生徒のためにと言うことで自主的にやってくれているのである。新聞・テレビはこぞって暗いニュースばかり報じる世の中、せめて本校だけでもと、朝の職員打合せで先生方に、各ホームルームでこの感心な生徒たちの行動を紹介し、うんと褒めるようお願いした。

  こんなことがあって一日中気分よく過ごし、いつにも増して仕事が捗ったので、今日はこんなもんで許してやろうかと帰り支度をしていた6時過ぎ、校長室のドアをノックする者がいた。「3年生が遊びに来たな、これは長くなるぞ」と思って行ってみると、そこには髪も制服もびしょ濡れの1年生の女子生徒2名が震えながら立っていた。
  「校長先生、融雪剤をまかないんですか?」
  唐突な質問、文脈が分からず、どうしたのと聞いたら、「昇降口がグシャグシャで滑りやすくなっていたので、今雪かきをしてきました。明日の朝、登校してくるみんなが滑らないように融雪剤をまいた方がいいのではないかと思って・・・」と。何と…。

  今年の冬は今までに経験したことがないほど雪のない冬。しかし夜半から、今まで我慢していた分までと言わんばかりのドカ雪。彼女たちが、今朝も野球部の生徒たちに混じって自主的に雪かきしてくれていたのは知っていたが、まさか、霙に変わって重くなっているのに、しかも暗くなっているのに雪かきしてくれていたとは・・・。まずは2人を隣の事務室のストーブに連れて行き暖を取らせ、融雪剤をまいたら踏み固めないと効果がないので明朝にしようということにした。その間、彼女たちの表情には何のてらいもなく、ましてや打算など微塵もない。あるのはただただ『みんなのために』という純粋な気持ちだけ。グラウンドでは雪だるまを作って遊んでいた生徒もいたというのに、彼女たちは何といい子なのか。汗と霙で濡れ、すっかり冷え切った彼女たちが風邪など引がず明日も元気に登校してきますようにと願いつつ、「ありがとね」との言葉を添えて見送った。

  『泣きたくなる話21話』はこれで終わり、HPにアップしようと思った今日(19日)、またまた嬉しいことがあったので追加しておくことにした。
  2年生と1年生の保護者の方から電話をいただいた。「送迎時、雪にはまって車が動かなくなっていたところ、生徒たちがみんなで車を押してくれて事なきを得た」という内容のもの。生徒を誇らしく思ったのはもちろんであるが、「生徒を褒めてください」と、わざわざ電話くださった方の気持ちに感激した。
  そして19日夕方の雪かきは、野球部員と陸上競技部員に増えていた。
  いい学校である。




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